ーーー 現在、どういった事業を展開されていますか?
現在、「一般社団法人VENTURE FOR JAPAN」(以下 VFJ)という会社で、主に新卒・第二新卒対象の就職サービスを行っています。具体的には、起業家志望や、成長したいという意欲を持つ若者と地方企業をつなぎ、新規事業の立ち上げや事業拡大のお手伝いをしています。
具体的には、地方の企業へ、学生を経営者直下の事業責任者や事業担当として派遣し、2年間の就業機会を提供しています。これは単なるインターンシップではなく、「就職」という形態を取っており、若者が実践の中で成果を出すと同時に、その後のキャリア選択を後押しする仕組みになっています。
我々VFJが若者を派遣しているのは、全国各地で革新的な挑戦を続ける成長企業や、地域を牽引する中小・ベンチャー企業です。実際の派遣先は、飲食、ホテル・旅館、地域創生、医療、IT、海洋環境など幅広い分野に及びます。例えば、奈良県のディライト株式会社(飲食)、宮城県の株式会社ホテル佐勘(ホテル・旅館業)、新潟県のきら星株式会社(地域創生)、京都府の株式会社京都メディカルクラブ(医療)、宮城県の株式会社シムネット(IT)、株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング(水産)などが挙げられます。いずれも裁量のあるポジションを用意し、若者に圧倒的な成長の機会を提供しています。学校で提供される「アントレプレナーシップ教育」があるように、VFJは「アントレプレナーシップ就活」のようなものを提供しています。
ーーー 事業を始めたきっかけと、現在までの歩みについて教えてください。
事業を始めたきっかけは主に二つあります。一つ目は、震災後にボランティアとして女川町に集まった起業家精神あふれる大学生との交流です。彼らは将来の起業や自己成長を望む一方で、スキルや経験不足から卒業後すぐの行動にためらいを持っていました。また、従来の就職活動や大企業への就職では、30歳までに実力をつけるチャンスが少ないと感じており、一方で大手への就職が推奨される現実に違和感を持っていました。そんな彼らも結局、消去法的に従来の就職活動を選んでしまう現状を見て、彼らの抱える「もやもや」を解消する新たな選択肢が必要だと感じました。
二つ目は、女川町の企業が直面している「経営人材不足」の課題です。東日本大震災からの再建を経て成長を目指す企業において、新規事業の立ち上げや事業拡大、組織開発を担える人材の確保は、非常に重要なものです。しかし、これらの企業は地域経済の要でありながら、さらなる成長に必要な新規事業や組織開発を担う人材の確保が困難な状況でした。ある経営者からは「地方の無名企業では優秀な経営陣は集まらない。これが地方企業の限界か」という声も挙がり、なんとかこの状況を変えたいと思うようになりました。
そこで、意欲ある若者と、地方の成長企業をつなぐことで、若者には圧倒的な成長機会を、企業には経営人材を提供し、双方にとってWin-Winとなるサービスを着想しました。これがVFJの立ち上げに繋がっています。
ーーー 現在向き合っている社会課題について教えてください。
前述の通り、意欲ある若者のキャリア形成における閉塞感の解消と、地方企業の経営人材不足の解決に取り組んでいます。これらの二つの課題を解決するため、若者を従来の就職活動の束縛から解放し、経営者直下の重要なポジションで2年間働く「STEP UP 730」というサービスを提供しています。
派遣先は、成長意欲の高い地方企業や若手経営者が多く、地域経済や雇用に貢献しようとする強い使命感を持つ企業が中心です。若者は経営者直下の重要なポジションを担い、2年間で具体的な成果を出すことが期待されます。これにより、若者は最速で起業力を磨き、地方企業は人材を得て成長し、ひいては日本社会全体の閉塞感を打破し、未来を切り拓くリーダーを育成していきます。そして、この仕組みを通じて、若者に成長機会を提供しつつ、地方企業へ経営人材を送り込むことで双方の課題解決につなげています。
ーーー 今後の展望についてぜひ聞かせてください。
現在、ありがたいことに企業からの問い合わせが非常に多く、学生の増加ペースを上回るペースで増え続けています。特に自治体連携やメディア露出、既存企業からの紹介を通じて多くの企業様にサービスについて知っていただくことができました。現在の課題は、さらなるチャレンジ意欲を持つ学生を増やすことです。
そのためにも、学生にとっての選択肢を広げる取り組みを今後も続けたいと思っています。教育現場では多様な選択肢やアントレプレナーシップ教育が広がる一方で、大学卒業時の就職は昭和から変わらず「就活一択、大手思考」であり、これが若者の多様な価値観と乖離している点が課題です。結果として、多くの若者が「もやもや」を抱えたまま社会に出てしまっている状況で、非常にもったいないと感じています。私たちはこうした課題を解消し、起業家精神や自己成長への意欲を持つ若者が力を発揮できる環境を広げていきたいと考え、今後も学生にとっての多様なキャリアの選択肢を広げる一助となりたいと思っています。
ーーー ご自身は東北学院大学に在学中はどんな学生でしたか?
大学時代は、比較的真面目に授業に出席していました。当時の生活の中心はフットサルで、日々の練習を行いながら、大学の授業、アルバイトなど充実した生活を送っていました。また、教員志望で大学に入学したため、教員免許取得に必要な科目も履修し、教育実習にも行きました。
大学時代の経験で最も大きかったのは、ゼミの先生との出会いです。その先生は学生の興味関心を伸ばしてくれるタイプで、私が面白いと思うネタを持っていくと、「いいじゃん、それ調べたらいいんじゃないの」と背中を押してくれました。また、私が当時、日韓ワールドカップの試合を見に行きたいと申し出たところ、「今しか見れない世界だから行ってきなさい」と送り出してくれたこともあります。恩師との出会いによって、自分の興味関心のままにチャレンジしていいということを学び、後の起業の原点になったと感じています。
ーーー 将来スタートアップを目指したい学生に対してのメッセージをお願いします。
「自分が興味がある、動いてみたいと思ったら、まず一歩踏み出してみること」を大切にしてほしいです。僕自身、大学2年生の時に「なにか一つ、自分が本気で頑張ったというものを持ちたい」と思い、フットサルのチームを立ち上げました。全国を目指すチームを作ろうと同級生を誘い、一人ひとりに声をかけてスカウトし、チームを編成しました。当初は勝てませんでしたが、最終的には4年生の時に全国大会に出場するチームに成長させることができ、「やりきれた」という大きな自信となりました。今の自分があるのはこの時に一歩踏み出せたからだと思いますし、リクルートへの就職や、その後の起業も、このフットサルでの経験とそこから培われたメンタリティがあったからこそだと考えています。学生時代は自由が利く時間が多いと思うので、この時間を使って「一歩踏み出して、自分の未来を自分で作っていく」チャレンジをしてみてください。
また、自分を応援してくれる人の存在も大切にしてほしいと思います。私自身、卒論のテーマに専門とは関係のない「コーポラティブハウス」(今のシェアハウスに近い内容)を選びたいと伝えた時、快く受け入れてくれた先生に大きく支えられました。青臭くても恥ずかしくても、きちんと耳を傾けてくれる人は必ずいます。そうした人に相談しながら、自分の思いを形にしてみることが、未来を切り拓くきっかけになるはずです。
皆さんもぜひ、自分の一歩を大切にして挑戦を続けてください。
